広告代理店のアルバイトは面白かった。東京中の出版社を回り、新刊された雑誌類を回収していくのである。地下鉄の切符を数枚渡され、午前はこことここ、午後にはまた、あそことあそこという指示が出されるままに、一人で一軒一軒の出版社を自分のペースで回るのだ。ある日のぼくは疲れていたので、とある出版社のロービーのイスに腰掛そのまま居眠りをしてしまったのであった。会社へ戻ると、「どこで遊んでいたの?」と当時の課長代理さんに叱られたが、「知り合いに会ってしまって」などととっさにウソをついてしまったのだった。それから、自分の持ち時間というものを気にするようになり、少しの寄り道は出来るようになったので、ますますそのお仕事が気に入ったのであります。